先輩起業家・経営者インタビュー

IRを通じて、日本の競争力を高め、新しい産業を生み出していきたい

プロフィール

平田 茂邦/株式会社マジカルポケット 代表取締役/EIP2期生
東京理科大学工学部経営工学科在学中に、株式会社イーマーキュリーなど、数社のベンチャー企業のインターンを経験。事業の発展に貢献することに喜びを感じる。大学卒業と共に、カナダ、バンクーバーに留学し、今後の人生を考える。1年半の留学後、2003年4月1日、株式会社マジカルポケット社を設立。

 

創業期のミクシィでのインターン、カナダへの留学経験後、23歳の若さで起業し、上場企業をクライアントにIRサポート事業をゼロから創り上げていった平田さんに、学生時代のインターン経験や、留学経験を通じて考えた「日本復興」への想い、そして、IRを通じて日本企業をグローバルに通用するガバナンスへと進化させ、
世界と戦っていける新興企業・産業を生み出していきたいというビジョンについて伺いました。

グループ中で一番ビリになる経験は人生初めてで、いろいろ挫折を味わった3ヶ月でしたね。
インターンを開始する前は、どんな学生生活を送っていたんですか?

大学は東京理科大学に行っていました。学校の勉強は最低限やっていたという感じでした。実家だったんですがアルバイトもしないで、親のすねをかじって、プラプラと大学生をしていた感じでした。ただ、真面目に勉強していたことも2つあってですね、1つは結果として宅地建物取引主任者(宅建)の資格を取ったんですね。実家が不動産業やっていたので、勉強してみようと思って、専門の学校に通って宅建は一発で通りました。もう1つは統計の勉強です。工学部経営工学科にいたんですが、比較的統計に興味があったので、1年生の時から、必修科目でない統計学をとってみたりしていました。みんな難しい統計の授業は敬遠していたんですけど、それだけはこだわって頑張っていましたね。

テレビ番組でのインターンシップの特集がきっかけでビジネスの世界へと足を踏み出したと聞いていますが、その辺りの経緯を教えてください。

大学3年の冬の就職活動が始まった時期でした。いくつかの会社説明会に参加したのですが、その説明にまったく感銘を受けず自分は普通の就職が向いていないのではないかと思い、あっさり就職活動をやめてしまいました。それで留学することを考えました。就職活動をやめた年末頃だったと思いますが、テレビでIT系の会社が紹介されていて、学生がインターンで活躍するというような番組を見たんですね。ちょうど2000年代前半のITベンチャーブームの頃です。まだよく覚えていますけど、学校行って、会社行く電車の間ずっとノートパソコンをカタカタやってインターンしているというような、かっこいい学生の特集という感じでインターン生が紹介されていたんです。学生でもこんなことやっている人がいるんだなと思いながら年を越して、だらだら学生生活を過ごしているのもなんだし、就職活動もしてないんだから、留学までちょっと頑張ってみようと思ってアルバイトを始めたんです。大手のインターネットビジネスをやっている会社が学生も歓迎、という感じだったので、その会社でアルバイトとして働き始めました。右も左も分かんない学生だったんですけど、なぜか経営企画部での仕事で、「インターネットのサイトの経営企画戦略を考えてください」と頼まれるんです。そこからは泣きたくなるような毎日で辛かったですね。「もっとちゃんとやんなきゃだめだよと上司に怒られたり。アルバイトの同期は学生6人くらいたんですけど、みんなパソコンが出来るんですよ。僕は何にもできない。インターネット検索も知らなかったんですから。そういったことを一から教えてもらいながら働いていました。グループ中で一番ビリになる経験は人生初めてで、いろいろ挫折を味わった3ヶ月でしたね。

相当自分の能力のなさを痛感したので、これはまずいと思って、それから2か月くらいは籠って、ずっとビジネスの勉強していました。ITの本も相当読みましたね。アルバイトで稼いだ10円の給与全部注ぎ込んで、段ボール1箱分ぐらいの本を買って勉強していました。本屋の棚にある本を上から下まで必要だと思うものはすべて買っていましたから。経営の本とITの本が中心でしたが、フロイトに関係する心理学の本も買って読んでいたりしました。経営だと会計も本当に勉強しなきゃいけなかったですし、マーケティングとか経営戦略の本とかも読んでましたね。

ETIC.と出会うきっかけを教えてください。

籠って本を読んでいた時期に、友達がETIC.の話をしていて、それでETIC.に行くことになりました。僕は株式会社ガイアックス(以下ガイアックス)でのインターンに興味があったんですけど、ETIC.のコーディネーターに相談したら「結論から言うと君はガイアックスは、ちょっと違うかもね」ということになり、紹介されたのが有限会社イーマーキュリー(現株式会社ミクシィ。以下イーマーキュリー)です。その当時インターン生とパートさんなど含めて6人ぐらいの会社でしたね。

ミクシィでのインターンは、仕事をしにいくというよりは、ビジネスをしにいくという感覚でした。

イーマーキュリーでインターンを開始した最初の印象はどのようなものでしたか?

オフィスも当時は、15畳ぐらいのスペースとお風呂と台所があるくらいで、端の方に布団が置いてあるという感じでした。僕がいうのも生意気ですけど、当時、笠原さん(株式会社ミクシィ代表取締役社長)も学生だったんでマーケティングとかそういう概念がないわけですよ。『Find Job !』(求人情報サイト)というサイトがあって、笠原さんがユーザーサポートしていて、「お問い合わせありがとうございました」みたいにサイトを運営している状況だったんです。そんなところに僕が行って、笠原さんといろいろ話をして、事業の相談をされたりするんです。僕は本で経営とか、システムなどの勉強をしていたので、「マーケティングとか必要なんじゃないんですか」みたいなことを話すと、有難いことに笠原さんもすごく興味を持ってくださったんです。

インターンを開始してから1週間くらいたった頃から、仕事の環境を見て、「今設定こうなっていますね。ちゃんと営業した方が数集まるんじゃないですかというような提案を笠原さんにさせていただいていました。学生で、年齢も近かったこともあったと思うんですが、やっぱり笠原さんが人の話を聞くという姿勢ができていたのが大きかったなと思います。笠原さんとはいつも夜な夜な会社の話しをしていましたね。『Find Job !』を無料から有料にしますとか、他社が保有している株式の比率を下げたいという話だったり、そんな話をよくやっていましたね。経営パートナーという気持ちで、会社を良くするために僕は何ができるかという発想で、やっていました。

その当時は、経営者になるとか起業するとか、将来をどのように描いていましたか?

起業は考えていなかったです。その時は留学に行くまでに期間限定でビジネスをするという気持ちでした。僕は今でもそういうところがありますけど、経営者をやりたいとか、あまりそういう気はないです。職業にこだわりはないので、どちらかというとビジネスをすることであったり、今で言うと社会的な意義を成し遂げることであったり、そういう気持ちはあるんですけど、そのための役割は何でもいいかなというスタイルですね。プログラマーとしての役割でも構わないし、社員として雇われても構わないですし。社会的意義を成し遂げるためにみんなでやれるんなら、チームが勝つんだったら、どんな役割でもいいやと思うんです。元々僕はそういう性格ですね。

インターン当初から「学びに行く」とか「経験する」という感覚ではなく「ビジネスをしに行く」という感覚だったんですか?

まあ多少はありますけどそんなにないですね。仕事をしにいくというよりは、ビジネスをしにいくという感覚でした。仕事というと業務的なイメージがあるじゃないですか、例えばマーケティングの業務をやっていますとか。そういうことより会社がどういう風に発展していくかが大事なので、ビジネスをするということしか考えていなかったですね。最初からそういう環境に置かせてもらったということはラッキーでしたね。普通にサラリーマンをやると「君はこうやりなさい。こうやって育っていくんだよという教育に対して、僕が最初にアルバイトで入った会社も、「君はどうやってこのビジネスを拡げるのかを考えることが仕事だと言われ、笠原さんのところに行っても、別にこれが担当業務ですというのはない。一部ありましたけど、それよりも「会社を良くすることに努力してくださいというスタンスだったので、周りの人がそういうスタンスで接してくれたというのは大きかったですね。

今は求人サイトで自分の個人情報を登録すると、企業からスカウトメールが届くと思うんですけど、そういうサービスは当時あまりなくて、そういったサービスも笠原さんと話ながらスタートさせました。それは『my Find Job !』という名前で、登録者制にするというサービスですが、その運用を、笠原さんと一緒にサービスを提供していました。そのデータベースが大体整った時に、1回検索するごとに企業は5万円払うという有料サービスにし、毎日2社くらい申込みが来るようになるのですが、そうすると1日10円くらい売上になるので、月で何百万と売り上げるようなサービスを結果として立ち上げることになりました。

そういった意味では、笠原さんといろいろ仕事を一緒にさせてもらいましたね。未だにに覚えているのが、笠原さんとお金の使い方、会社の話になって、2人で自分たちの給料減らして、会社の投資に回していこうと話したことを覚えています。僕は学生で実家ですし、笠原さんもそんなにお金が必要ないということもあったんですが、5万円給料が多くもらえるよりは、自分たちで広告を打って、そのレスポンスを見ている方楽しかったので給料を減らして会社に投資をしていました。そういう経験もあり、インターン生はお金を求めなくていいと思っています。そういう給料を減らしてでも会社に投資をするという視点を持つことは、社会人ではなかなか出来ないですよね。そういうことができるのがベンチャーでのインターンの特権だったかもしれないと今だから思いますね。その5年後くらいにmixiが誕生するんですけど、僕は海外に行きますと、4年の冬にインターンが終了するかたちになりました。

日本は新しい産業を育てるリスクを取っていない。それを変えるために、IRでちゃんと資金調達をして、新しいビジネスを創れるような、マーケットを作らなきゃいけないと思うんです。

 

なぜ留学先でもインターンをされたのですか?

そうですね。インターンが経験できる留学プログラムを最初から選んだんです。英語だけ勉強しに行っても、先が見えているじゃないですか。自分はビジネスをしてみたいなと思ったので、留学先のカナダでもインターンをしました。ホームシアター販売会社、シンクタンク、商工会議所などで、インターンを経験しました。その中で印象的だったのが、ボードオブトレードという日本でいう商工会議所のようなところでのインターンです。そこには、起業した人がビジネスの登記書類を提出しに来るので、その書類を受取って、登記する会社の名前が重複していないかチェックするといった仕事だったんですが、何が印象的だったかと言うと、大学生の女の子が彼氏と一緒に来て、会社の登記をするんです。おばさんとかも、「レストランやるんだ」と登記しにくるんですよね。みんなすごく楽しそうなんですよ。日本の登記所と言ったら、おじさんがいっぱいいて、登記のためのお金を払って書類を提出して終わり、という感じなので、大違いですよね。「これからこんなビジネスをするんだ」とか、「こんなサービスを創るから、学校でこうゆう勉強したいんだよね」という感じで、海外は起業とかビジネスがこんなにも身近なんだと、良い意味でショックを受けました。

カナダでの留学時代に海外のインターン生とビジネスの話をたくさんしたそうですが、どのような話が印象に残っていますか?

そうですね、たくさん海外の学生と話をしました。日本のビジネスのことも聞かれました。それに対してあんまり良い答えはできなかったですね。「トヨタ、ホンダとかは良いけどね」という風に話になるんですけど、「次の日本のグローバル企業はここなんだよ」という答えはできなかったですね。日本は、こういう分野、こういうビジネスに将来性があるとか、そういう話もできなかったですし、むしろだんだん話をしていくと「観光で行くと京都はいいよねと、ビジネスの将来性のある話にはまったくならないんです。そういうのが悔しくて、帰国して日本復興というと偉そうですけど、日本の社会が良くなるような事業がしたいと思うようになりました。

日本でIRの事業を立ち上げた経緯とIRに感じた可能性を教えてください。

1年半くらいカナダにいたのですが、帰国してから半年ぐらいで事業を立ち上げようと考えました。半年で事業が創れなかったら、諦めて就職しようと思っていました。いくつか事業計画を立てて、日本の役に立てることが何なのかと考えながら、ITのビジネスだったり、いくつか企画書を書いて、最終的にIR事業を起ち上げることになります。

IRでやれることって究極には2つしかないんですね。1つ目は株主構成を作って、株式会社としての機能を持たせることです。日本の企業はどういう仕組みになっているかと言うと例外を除いて年功序列で、年配者が社長になるという通例なんです。基本的に上場企業の社長さんは50~60歳くらいの方が多いんですね。実力あるからといって30歳で社長になれるかというと100%ないわけですよ。そういう意味では、グローバルスタンダードは日本と違って、ある程度実力主義になっている。起業当時、学生ながら思っていたことですが、日本の経営というのは、実力主義じゃないわけですよ。外国人の友達にも「日本の企業に就職することに興味はない。日本人しか役員にはなれないんでしょう。年齢を重ねないと役員になれない。それが目に見えている。」と言われたんです。それは優秀な人には面白くないですよね。年齢重ねないと役職はもらえないし、極端な話、新卒で入らないと社長にはなれない。そうすると、外国人の優秀な人が途中から入ってくるというようなことには全くならないんですよね。

そういう風に、日本の経営者というのは、プロセス(年功序列)で選ばれているんですけど、海外は基本的に、株主総会で選ばれている。株主が、その経営陣を反対だと思えば投票もしないですし、結果として株主の支持を得られない人は社長にはなれない。それはいたって株式会社としては当たり前の論理なんです。日本も今後グローバルな社会になっていくには、そういう環境にならないと、いつまでも内弁慶で自分たちの好きな人たちを選んでいるというやり方をしている限りは、グローバルな企業にはなれないですよね。そういう意味ではIRで株主構成をつくったり、株主さんとコミュニケーションを図って、株主さんからちゃんと信任を得て経営者が選ばれるプロセスが実現できない限りは、グローバルな成り立ちにはならないと思っています。

それともう一つ、IRでやれることの2つ目ですが、株価を上げて資金調達をするということがあります。グーグルなどは資金調達で10億とか100億とか集まってしまうわけですよ。一方で日本のベンチャー企業が5億、10億集めるとなったらすごく大変です。だからといってベンチャー企業が資金調達のために銀行からお金を借りられるかというと、ほとんど借りられない。そうすると新しいビジネスが育つ可能性なんて、ほとんどないわけじゃないですか。僕が理解している限りではアメリカは、昔は自動車からなにから作っていたと思うんですけど、製造業はほとんど日本にとられてしまった。それでアメリカがやったのは、ゴールドマンサックスなどのファイナンスビジネス、それとIT産業で、それらを投資家が育てたんですね。

一方で日本は敗戦後50年くらいはソニーが育ったり、ホンダが育ったりはありましたが、この30~50年くらいグローバルな会社なんて1社も出ていないわけですよね。そういう意味では、日本は新しい産業を育てるリスクを取っていない。そういった国の将来なんて見えているじゃないですか。それを変えるために、IRでちゃんと資金調達をして、新しいビジネスを創れるような、マーケットをつくんなきゃいけないと思うんです。日本の企業は資金調達を投資でなく融資で賄っているので、極端なこと言うと、金利3%で資金を貸すということは、100社中3社潰れたら、元はとれないといことですよね。新規事業で100社中97社成功するビジネスってあるわけないですよね。だからマーケットを動かさなければいけないと思ったんです。

会社における経営者の選定と資金調達が会社にとっては重要なファクターだと思うんですが、この2つを実現できるのがIRだと思ったわけです。

創業して、最初の半年くらいは何にも仕事がないような状況で、インスタントラーメンに卵を入れるかどうかで悩んでいましたよね。

IRとはどういう企業活動のことか簡単に教えてください。

IRとはインベスター・リレーションズ(Investor Relations)の略で、投資家向け広報活動のことです。企業が株主や投資家に対し、投資判断に必要な企業情報を提供する活動のことをいいます。企業 はIR活動を通じて投資家や株主と意見を交換し、資本市場で適切な評価を受けます。また、外部からの厳しい評価により経営戦略の質を高める事ができます。

起業してすぐに事業は軌道に乗ったのですか?

IRって上場企業さんがクライアントなので学生がいきなりIRのお手伝いをやりますと言ってもあまり信憑性はないですよね。だから4月1日に創業して、最初の半年くらいは何にも仕事がないような状況でしたね。いつもインスタントラーメンをスーパーでいっぱい買って食べていました。卵を入れるかどうかで悩んでいましたよね。(笑)貧乏生活はあまり苦にならないタイプなんですけど、あんなに貧乏だったのも人生で初めてかなというくらいお金がなかったですね。

初めて仕事を受注するまで半年間、めげることなどなかったのでしょうか?

いっぱいありました。日暮里のワンルームで仕事をしていて、近くに24時間営業のレンタカー店があったんですけど、時給1000円と出ているんですよ。そこでアルバイトしようかなと思ったりもしました(笑)。こっちの方が良いんじゃないかなあと思うことはいっぱいありました。でも最初の1年間は自分を信じてやろうと思ってやっていました。信じていた理由としては、IRという事業自体が日本に必要だという強い想いがあったからです。マクロ的に見たときに投資家に対する情報開示は確実に進むじゃないですか。そういった社会の変化に対する確信があったので、最初からIRサポートを事業にすることに関しては、未来があるというのは信じていました。一発当てるみたいな感じだと、1年間信じてやれないかもしれないんですけど、絶対そのフィールドが大きくなることを信じていたので、夢はありましたよね。

マジカルポケットの事業内容を教えてください。

IRサポート事業をやっています。具体的には、投資家に企業の優位性や魅力を理解してもらい、安定株主をつくり、資金調達を効率的に行うことを目的とし、企業をサポートしています。クライアントの多くは、NTTドコモ様や住友商事様といった大手企業様で、その各企業様のIRを任されています。

日本の企業は、技術面・サービス面において非常に優れたレベルにあるものの、投資家からの評価はあまり高くありません。また敵対的買収やプロキシーファイトなど、企業の存在自体も揺らぐことが増えており、企業と株主の関係も年々変化しています。マジカルポケットは、このような企業の安定や成長などを、IRを通して作っていくことを目的として、日々業務にあたっています。

IRは上場企業がクライアントとなるわけですが、クライアントはどのように開拓していったんですか?

まったく実績のない僕らがなんで上場企業のクライアントを開拓できたかというと、理由は2つあると思います。1つはクライアントがリスクを取ってくれたということだと思うんですよね。IRサポートは産業自体が新しかったので、インターネットの産業もそうですが、過去の実績があまり使えない。過去の実績が良いからサービスがいいという風に連動しないんですね。そういう意味では僕らが提案したことは、既存の会社と違ったやり方、新しいコスト感でやれたのも大きかったと思います。会社の大きさ、実績より、提案自体が面白いかどうか評価してくださったのが事実だと思います。

2つ目が、創業期に社員となったメンバーが2名いるんですけど、彼らが頑張ったのがすごく大きかったと思います。また、インターンの学生たちにすごく助けてもらいました。本当に冗談抜きで、インターン生がすごく売上を創ってくれました。本当にお客様のお陰、インターン生のお陰、社員のお陰ですね。ETIC.は良いインターン生をいっぱい紹介してくださって、そのお陰で伸びたのはすごくあります。創業時は、社員3名しかいなくて、インターン生を最大限活用させてもらいました。

経営者と「どう経営戦略を変えていきますか」「IRをすることによって経営戦略をどれくらい変えていくんですか」というのがIRコンサルの本質だと思っています。
マジカルポケットとして、今後取り組んでいきたいことや、新たに仕掛けたいことなどを教えてください。

最近取り組んでいることは、企業さんのIRのコンサルティングのようなことをやっています。具体的に言うと、株価改善と、株主構成の変更、その2つの項目が会社の経営に直結するので、そういう相談に応えていくことが、だいぶ増えてきました。「今後、株価を改善して上場したいんですよ」「M&Aの原資にしたいんですよ」「社員にストックオプション出したいんですよ」とか、株式の様々な使い方に関して相談を受けた時に、思い描いている会社の成長ラインに対して、どういう株価形成をしていけば良いかといった話をさせて頂いています。IRで出来ることは会社が本来持っている力を示すことなんです。財務的に言えば今の株価と適正株価の乖離を埋めるのがIRだと思っているので、その乖離があれば僕らがアドバイスさせて頂きます。そういうケースは比較的大手企業さんには少ないんです。例えばドコモさんが、いきなり株価が倍になるかというと、あんまりそういうことはないんですよ。どちらかというと、日本は新興の会社が出て行かなければいけないですし、新しい産業を産んでいかなきゃいけないと思っているので、最近はそういう新興の上場しているベンチャー企業の面倒を見させていただいています。直近ではそういうことをやっていきたいのが1つと、もう1つは、海外の事業をやりたいと思っています。最近、海外の会社が日本の上場会社を買っているんですが、それも一つの方法だと思っているので、日本の企業の海外向けIRサポートもやっていきたいと思っています。中国の企業がラオックスさんを買収しましたが、買われなかったら、倒産だってあったと思うので、そういった意味ではそのような選択肢も、IRを通して拡がっていけばいいんじゃないかなと思っています。

日本でのIRの認識が変わってきているとか、その辺の手ごたえは感じていますか?

変わってきたと思います。起業した8年前、IRはデスクロージャーという概念だったんで、「決算短信出しました」「説明会資料出しました」というのがIRだという概念だったんですね。今はもう少し、「株主さんどうしようかな」「株価どうしようかな」「IRツールこういう風に作ろうかなというところまでは来たと思います。

それでも、まだ全然僕らの考えているゴールからは遠いんですね。アメリカが良いかどうかは別として、アメリカのIRカンファレンスに1年に1回イベントがあるので行ってみると、あっちはIRオフィサーという役割がちゃんとあって、経営戦略上、株主に対してどういうことをして、どういう還元をして、どのように株主に対してコーポレートガバナンスを説明していくかと、完全に経営の一環なんですね。日本はどちらかというと「ツール作ってどういうものを入れましょうか」「CSR入れましょうとか、「業務」なんですよ。一方でアメリカでのIRは「経営」なんですね。その温度差はまだまだありますね。良いかどうかは、また別として、一時ライブドアさんは完全にIRは経営の一環として、株価を高めてM&Aを戦略にしていました。IRはM&Aだけじゃないと思うんですけど、IRが「経営」という位置づけになるにはまだ課題は大きいと思っています。そこまで日本のIRはいかないといけないと僕は思っています。

そのためには、具体的に企業に入りこんで戦略の部分まで考えていくということは今後やっぱり強化していきたいですか?

そうですね。それがコンサルの部分なので、日本のIRコンサルは一応あるんですけど、あくまでもツールのコンサルなんですよ。「株主通信どう作りますか」「アニュアルレポートどう作りますか」みたいなコンサルばかりなんです。そうじゃなくて経営者と「どう経営戦略を変えていきますか」「IRをすることによって経営戦略をどれくらい変えていくんですか」というのがIRコンサルの本質だと思っているので、そういうことをやっていきたいですね。

経営者の視点で物事を見ることができるというのが、ぼくは一番の魅力だと思います。
インターンの経験が、今の人生にどのような影響を与えていますか?

社員によく言うんですけど、ビジネスはお客さんを幸せにしたり、お客さんを幸せにするために会社を発展させるということが目的であって、営業することやメールを書くこと自体が目的ではない。それはインターンを通じてより思ったことだし、今でも影響を与えていることかなと思います。例えば、ミクシィの笠原さんが、社長ながらカスタマーサポートをしているのを見ていて、社長だからこういう仕事をするとかではなくて、会社にとって良いこと=お客さんにとっての良いことだと思ったんですよね。お客さんや会社のために自分は何ができるかということを考える、そういうことをインターンで学んだ気はしますね。

なぜそういうことをインターンで学べたかというと、一番の理由は会社が小さくて、黎明期で、そういう環境にあったということが一つの要因だと思います。「このネットのサービス調べて」とだけ、言われた最初の大企業でのアルバイトの時はあまりそういうことはわからなかったですね。でも、笠原さんと2人でやる環境になって、自分のやったことがダイレクトに反映されるという経験ができたのは、非常に大きいことだったなと思います。インターンやるんだったらそういうところでやった方が良いと僕は思っています。

「お客さんの為という考え方は、ビジネスをする上では大切なことだと思いますが、それを大切にするのはミクシィの笠原さんからの影響ですか?

お客さんの為という点では、起業してから実感するようになりました。インスタントラーメンしか食べられない時代があり、ちょっと成長して吉野家に行けるようになり、それはお客様から仕事をいただいて、食べられたという感覚があるので、創業期の実感が大きいと思いますね。あとは、『Find Job!』という求人情報サイトのサービスを笠原さんとやっていた時、クライアントであるベンチャー企業の方から、安い広告料で良い人材を集めることができましたという反応をたくさん頂いたんです。その積み重ねでサービスが大きくなっていったんですけど、そういう感謝の言葉をいただけたのは、「お客様の為」という視点を強く持つようになった契機だったと思います。

平田さんが感じているETIC.のインターンシッププログラムの魅力を率直に教えてください。

経営者の視点で働けることではないでしょうか。それが一番大きいですね。うちでもインターン生を預かったりするんですけど、ちょっと形式化してきて、アルバイトの延長、社会人の経験値を積める、みたいな感じなってきています。でもETIC.さんの目指していることは、多分違う所だと思うんです。経営者の視点で物事を見ることができるというのが、ぼくは一番の魅力だと思います。

騙されたと思って1回挑戦してみることを勧めます。正直やってみないと分かんないと思うんです。インターンをやる前からいくら考えたって、得られるものって全然わかんないし、そもそもビジネス自体、学生は分からないじゃないですか。なので、まず第一歩を踏み出してみて、それで合わなかったら辞めてみるとかでもいいと思うんですけど、まずやらない限りは何も始まらないんじゃないかなと思うんですよ。

もう1つの魅力は、人生の選択肢が増えることだと思います。僕の大学の同級生なんかは、みんなCANON行きましたとか、IBM行きましたとか、決まった道なんですよね。会社名が違うだけであって、基本的に大学行って企業入りましたという風にね。人生はそんな選択肢以外にもいっぱい道はあるじゃないですか。それこそ自分でビジネスをやるのもそうだし、中小企業に入るもそうだし、NPOに入るもそうだし、海外に行くもそうだし。人生の選択肢って今挙げただけでも4・5個あって、1個じゃないわけですよ。インターンを経験すると少なからずその選択肢が広がるのは事実だと思います。

それから今、逆の立場でインターンを受け入れるようになって思うのが、彼らからすれば僕は10歳上の先輩になるわけじゃないですか。となると、10歳上の人と隣あって一緒に仕事ができるというのも、なかなか普通の学生生活を送っていたらできないですよね。そういう経験値を積むというのもすごく大きいと思うんです。インターンの受入企業によって、すごく環境は違うと思いますが、その環境の中で最大限得られるものを取りにいけばいいかなと僕は思っています。

(2011年1月取材)

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