内定後インターンのススメ

体験談

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私が今、企業で目標を見失うことなく働けているのは、就職する直前までインターンをし得た「決して忘れない、私のビジョン」のおかげです。

プロフィール

  • 所属:株式会社サニーサイドアップ
  • インターン先:NPOフローレンス

[NPO法人フローレンス概要]
「子育てと仕事そして自己実現の全てに、誰もが挑戦できる、しなやかで躍動的な社会」をビジョンに掲げ、こどもの熱や軽い病気の時に、安心して預けられる場所が圧倒的に少ないという「病児保育問題」を解決することを目指す、ソーシャルベンチャー。
http://www.florence.or.jp/

絶対、社会起業家になる!その思いを大切に、時間を割ける大学4年のうちに、社会的事業にどっぷりつかってみたかった。

―インターンをする以前で学生時代、特に力を入れた活動や将来ビジョンにつながるきっかけとなった経験を教えてください。

「やらないよりはやる!」がモットーなので、興味のあることは端から端までやりました。全ての経験が今につながっていると思いますが、大きくトピックスをあげると3つあります。

学生時代は、地元の映画祭のボランティアスタッフとして活動していました。小規模かつ知名度も高くない、地元の人にさえも知られていない映画祭でしたが、選出する映画の質はすばらしく、またボランティアスタッフとして働く皆さんが非常に積極的で映画祭に対する愛情が深い方々ばかりでした。しかし、そこで疑問に思ったのが”ボランティアの在り方”でした。映画祭が好きなら仕事を辞めてずっと関わればいいのに、無償だから、別の所でお金をもらって働かざるを得ない。

多くのボランティアスタッフは社会人だったため、地域活性に興味があっても、仕事との両立が難しく、身を削るような思いで参加している、ボランティアというあり方の限界とその現状に疑問を持ちました。

2つめのきっかけがアメリカ留学でした。ホームステイ先には養子縁組の子供が暮らし、隣のスーパーが黒人に賃金差別を行っていることに対して運動が起こり、「ヨウコも参加しよう」と誘われる、大学では誰しもが政治や人権問題を、ランチで論じている。地域活性や人権問題など、アメリカ人の社会への興味の強さを肌で感じました。また何も知らない自分を含め、日本人として「このままではいけない」と感じました。

帰国後にちょうど、母親が介護福祉士になったことが3つめのきっかけです。人手が足りない介護業界の安賃金と重労働。毎日のように聞かされる母親からの介護業界の問題を聞けば聞くほど、社会ではリアルに多くの問題が起こっていることを知りました。

そんな時たまたま、大学のゼミでグラミン銀行について学びました。社会問題を事業ミッションにおき、ビジネスとして社会問題を解決する働き方は、まさに私の将来ビジョンの先にあったものでした。

―どういう問題意識や将来ビジョンを持ち、どういう就職活動をしましたか?また、結果なぜ、今の内定先に決めましたか?

将来的には、今の会社で学んだスキルを活かして、自分が意識のある社会的事業で働きたいという思いで就職活動をしました。そんな中でも「知ってもらうこと」、認知を広める重要性を、特に問題意識として持っていました。知られていないとチケットが売れなかったように、知られれば売れるし、利用者も増える。NPOは多くの人に利用されてこそ意味のある団体ですが、認知させるための広告的ツールは、特にお金がないNPOでは利用できません。少額で認知を広げる、ブランドを作っていく、広報を学びたいと思い広報のプロフェッショナルであるPR会社に就職を決めました。

―内定後の大学4年の過ごし方として、数あるチャレンジの選択肢がある中でなぜインターンをしようと思ったのですか。

ものすごく迷いました。旅行に、最後くらいやってみたかったバイトに・・・、友達からは「どうして内定も決まったのに、インターンなんてするの?バカ?(笑)」と散々聞かれました。でも将来必ずやりたいことが自分の中で明確で、絶対、社会起業家になるという思いが強かった。この気持ちを大切にして、社会的事業にどっぷりつかってみたかったので、時間を割ける学生のうちに、インターンをしようと決意しました。

様々な経験を通して感じました。私は健康で、話すことができて、走れるし、目が見える、家族が居て、友達が居て、大切な人が居て。これ以上幸せな環境なんてないのに、どうしてやりたいことをやらないんだろうともやもやしていました。私はものすごくミーハーで、おしゃれもメイクも大好きな流行を追いかけ続ける女の子でした。いつのまにか、最新の服もコスメも、もうこれ以上モノはいらないと思っていました。日本の社会問題に意識を持ち、気付いた責任がある、だから今すぐ行動したいと思ったのが、インターンのきっかけです。

仕事を通して、助けたい人を思い描き、毎日、その人たちに向かって仕事をする。

―インターン先を選んだ決め手、インターン先の事業内容、インターン先でどのような仕事を行ったかを教えてください。

いわゆる「社会起業家」として、一番活躍している最前線の人と仕事がしたいと思っていたので、フローレンスに決めました。また自分が興味があることも、「医療・介護」という分野だったので、病児保育サービス事業を展開するフローレンスで働くことは今後につながると考えたからです。単純に駒崎さんがどんな人か興味があった、というのが一番強いですが・・・笑。

フローレンスは”病児保育”といって、急に病気にかかったお子さんを預かる保育事業を展開しています。私はそこでメインの「病児保育事業部」に所属しました。日々雑務や利用会員さんの対応を行っていました。同時に新規利用会員さん向けに、フローレンスをわかりやすく説明するためのツールとして、説明ビデオ製作を行いました。構成、台本、編集・・など、一人で1本を作り上げました。

その後、フローレンスの新規事業として立ち上がった「おうち保育園」立ち上げに参加しました。「おうち保育園」とは今までの事業と目的が異なり、”待機児童解消”のために、保育園と保育ママの中間的存在として立ち上がったミニ保育園です。行政との交渉、サービスを開始するための準備、場所の確保、保育士さんの求人などおうち保育園がスタートできるための全ての準備をしました。

―インターンをしていて面白かったことや、やりがいを感じたことを教えて下さい。

具体的に「こんな結果が」というものはありません。日々の出来事が積み重なって、”フローレンスでインターンをした毎日”が面白かったしやりがいだったと思います。今、思えばですが。(笑)

何にやりがいを感じたかといえば、助けたい人を思い描いて、その人たちに向かって走り続けられたことだと思います。私は毎日、利用会員さんからの質問を電話を通して受けていました。

何に疑問を持ち、フローレンスに対してどう感じているのか直接聞けたため、またフローレンス歴が浅いからこそより利用会員さんに近い目線で居続けられ、客観的に、もっとフローレンスをよくしていくためにはどうしたらいいのか考えられるようになりました。「組織は現場によって試される」と駒崎さんは言います。電話をとる、足を運ぶ、子供と触れ合う。頭の中だけでは仕事はできない。

インターンをはじめた当初は、「自分が成長すること」が目的だったインターンも、次第に「フローレンスを利用してくれている会員さん達のために」という目的に変わっていきました。少しでも利用会員さんに満足してもらいたいと考え仕事をし、喜んでもらえた時には、本当に嬉しかったです。

―インターンで辛かったこと、悔しかったことは何ですか?

辛いこと、悔しかったことはいくつもあります。フローレンスではインターンミーティングという、メンターの方とインターン生だけで行う毎週のミーティングがありました。次第に私たちの話も深くなり、人生とは、働くとは何か、という壮大な質問をなげては全員泣いては(笑)、ものすごく迷惑をかけていたと思います・・w。特にサービス業は雑務が多いので、大胆に社会を変革させるぞ、というイメージとのギャップには苦悩しました。

駒崎さんから教えられたことに「ABC」という言葉がありました。「A(当たり前のことを)B(バカになって)C(ちゃんとやる)」信頼や大きな成果は、小さなことの積み重ねです。目先のことに囚われているのではなく、より先のゴールイメージを見つめながら、仕事をすることの重要性と難しさを学びました。社会人になっても、大切にしている言葉です。

―インターンを通して得たものは何ですか

いっぱいありますが・・・一つは一生大切にしたい人や、尊敬できる方に出会えたことです。

2つ目は「挑戦を拍手する」という気持ちです。怒られることを極端に怖がっていた私は、初めの頃、人に頼ってばかりでした。今でも完全回復とまでは決していえませんが、わからないこと・怒られることを恐れず、失敗から学ぶ大切さを知りました。だからこそ、120%の成果を出したい。出来ない理由じゃなくて、出来る方法を探す。失敗しても死なない。自分の一番の弱点を見つめ続けたことで、得たものです。

「この問題を解決したい」という明確な気持ちを持てた今、不安な気持ちは一切ありません。

―将来ビジョンや問題意識に対してインターンが与えた影響やもたらした変化は何ですか?

インターンが与えた影響は大きかったです。特に”自分が助けたい人”を思い描けたことは、私の中で大きな変化でした。インターンを始める前から、働き方の一つとして、”社会的事業会社”で、自分の力を注いで働きたいと考えていました。しかし、実際にどんなことをやりたいのか、本当に助けたい人は誰なのかということは、明確ではありませんでした。私って、ただの調子のいい、偽善人間なのかもしれない、とも思いました。ですが、インターンを通して「このフィールドで働きたい」「この問題を解決したい」という明確な気持ちを持てました。だから不安な気持ちはもう一切ありません。フローレンスでは、それぞれの人がそれぞれの思いを持って働いています。ですが、皆が助けたい人は同じ人たちでした。なぜぶれないのか考えると、その先に共通の”実現したい社会イメージ”を、みんなが持っていたからだと思います。私が助けたい人はどんな人で、どんな社会を実現したいのか、フローレンスの人達の働く姿勢を見ながら、四六時中考えました。そこから、「介護うつ」という、一つのキーワードが強くなり、”自分が助けたい人”に変化していきました。

本や誰かのエピソードを通して、学ぶことは簡単です。でも手足を現場で動かしながら、自分の将来を考えると、よりリアルに、具体的に、将来ビジョンを思い描けると実感しました。

―これから内定後のインターンを考えている人にメッセージをお願いします。

私は会う人全員にいつも、「大学4年生のインターンって、本当に最高だよ」と話します。出来ることなら、迷っている人全員に話してあげたいくらい(笑)

ごちゃごちゃと話しましたが、伝えたいことはただ一つ。考えるよりもやってみること。“社会的な事業に関わって、自分の力を活かしたい”と思う、その大切な気持ちが死なないようにしてほしい。悩んでいるだけでは、やっていないのと同じことです。

私の宝物は、インターンを通して得た、「ずーっと忘れられない、私のビジョン」です。毎日忙殺されるように働きながら、よく思い出します。私今何しているのかな、ビジョンに向かって進めているかなって。

私が今、一般企業で目標を見失うことなく働けているのは、就職する直前までインターンをしたからだと思います。

リスペクトのレンズをつけて、120%前のめりで行動する。フローレンスで学んだことがそのまま持続して、今もずっと続いています。将来実現したいこと、そのために今学びたいこと、全てが点ではなく線でつながるように、気持ちを持続して走っていると今は感じます。

(取材日:2011年3月)