内定後インターンのススメ

体験談

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内定後の一年間は、社会人になる前に、自分の将来の夢やキャリアプランをじっくり考え、明確にできる、最後のまとまった時間だと思います。

プロフィール

  • 大学:慶應義塾大学
  • 内定先:大手総合商社
  • インターン先:株式会社HASUNA

[株式会社HASUNA概要]
人や社会・自然環境に配慮した素材、フェアトレードやリサイクルの素材を使用する「エシカルジュエリーの制作・販売を展開。ジュエリー作りを通して、生産者から身につける人まで全ての人が幸せになり、また、ジュエリーの素材が産まれた土地の文化・美しさや、贈る人や身に着ける人の想いを込めることを目指している。
http://www.hasuna.co.jp/

国際協力の新たな仕組みを創りたい!そのためにソーシャルベンチャーの世界を知りたかった。

―インターンをする以前で学生時代、特に力を入れた活動や将来ビジョンにつながるきっかけとなった経験を教えてください。

私は大学2年のときに友人と学生団体を設立し、その活動で年2回インドネシアの孤児院を訪問し子供達に日本語や英語を教えています。旅行会社が企画する海外ボランティアツアーに参加した経験から、それとは違う自己満足ではない形のボランティアを追求したいと思ったのがこの学生団体を設立するにいたったきっかけでした。頼れる前例のない環境で一から活動を築き上げる過程は、私を精神的に大きく成長させました。「人のためとはどういうことか」、「生きるとは何か」、「夢と理想とその限界」など、様々な普遍的な問いと向き合ってきました。かけがえのない団体メンバーの皆や孤児院の子供達と切磋琢磨する日々の中で、私はそれらの問いに対する自分なりの答えをぼんやりと形作ることができたと思っています。そしてその自分なりの答えは、私の根底にある価値観を再認識させてくれて、私の本当にやりたいことを気付かせてくれるきっかけとなりました。

―どういう問題意識や将来ビジョンを持ち、どういう就職活動をしましたか?また、結果なぜ、今の内定先に決めましたか?

「モノを増やす以外のアプローチで世の中を豊かにしたい」、「世界各国のビジネスパートナーやお客さんと仕事がしたい」。私は主にこの二つの考えを持って就職活動をしました。これらを最も満たすのが総合商社だと考えていたのですが、幸いにも第一志望の総合商社に内定することができました。学生時代を海外でのボランティア活動に費やしたと言うと、NGO法人や政府系団体へ就職しなかったことを疑問に思われることが時々あります。私自身も大学2年生の頃までは自分の道はその方面にあると感じ、民間企業への就職はあまり考えていませんでした。しかし、実際に政府系団体でインターンをしてみたり、いくつかのNGO法人の活動に関わってみたりして、就職先は民間企業が自分には合っていると考えるようになりました。主な理由は、政府系団体では国の方針や助成金に制約された事業内容に窮屈さを感じたのと、依然、多くのNGO法人が誰かに対する“援助”という活動形態を取っていることに共感できなかったからでした。就職活動をする頃には、一方的な援助ではなく何か他の形で国際協力ができるはずだと強く思うようになっていた私は、あえてビジネスの世界に入ることを選びました。そしていつかビジネスセンスやノウハウを培って、それを国際協力に生かすことで対等な関係に立った国際協力の仕組みを作りたいと思っています。そういった意味では、私の選んだ就職先は中長期的なキャリアプランのためにも最適だったと考えています。

―内定後の大学4年の過ごし方として、数あるチャレンジの選択肢がある中でなぜインターンをしようと思ったのですか。

就職活動が終わったら、ソーシャルベンチャーでインターンをしようと以前から心に決めていました。私は大学入学後、ソーシャルベンチャーというものを初めて知り、興味を持つようになりました。私にとっては、不思議な、気になる存在だったのです。だって、自社が利益を上げながらそれが世間のためになるというのは、どんな企業でも究極的な理想とするものでしょう。でも、それが言うほど簡単なことではないというのは学生の私にもわかることです。では、ソーシャルベンチャーとはどのようにしてそれを実現しているのか、一般の企業とはどういった相違があるのか。その答えの断片でも垣間見ることができれば、きっと私の将来とも何かしらの形でリンクするだろうと思いインターンを決意しました。

『ゼロから創り上げられたこと』、それがインターンの仕事の一番のおもしろみでした。

―インターン先を選んだ決め手、インターン先の事業内容、インターン先でどのような仕事を行ったかを教えてください。

HASUNAは、ジュエリーの制作販売を行っている会社です。ジュエリーを身につける人だけでなく、生産過程に携わるすべての人が笑顔になることを事業の目的としています。ルワンダやベリーズやカナダからジュエリーパーツを輸入しており、各国の自然環境の保護、産業の復興、雇用拡大などに貢献するような形で事業展開しています。

私がHASUNAを選んだ理由は、主に二つあります。一つ目は、大学で東南アジアのゼミに所属し人身取引問題について研究していたことから児童労働や労働問題に関心を持っていたからです。HASUNAの事業はこれらのテーマと関連しており、きっとやりがいを感じられると思いました、二つ目は、好きなモノと携わって仕事がしてみたかったからです。学生時代は学生団体の活動に労力も時間も費やしていたので、バイトは私にとってそのための資金を稼ぐだけのものでした。なのでジュエリーという純粋な興味関心のある物に関わりながら働いてみたいという好奇心があったのです。

私のHASUNAでの主な業務は、マーケティング分野のCRMの戦略立案でした。CRM戦略とは、簡単に言うと一度商品を購入してくださったお客様にリピーターとなってもらうためのあらゆる手法を指しています。一般的にメーカーでは売上全体の60%以上をリピーター顧客が占めているため、このCRMという分野は売上向上と安定的な収益確保のために大変重要な位置づけにあります。私はHASUNAで働き始めてはじめてCRMを知ったので、図書館に通って勉強をしながら戦略立案に悪戦苦闘する日々を過ごしました。

―インターンをしていて面白かったことや、やりがいを感じたことを教えて下さい。

『ゼロから創り上げられたこと』、それがHASUNAでの仕事の一番のおもしろみでした。私はインターン第一期生で、さらにCRM部門は私が入った時点ではまだ存在していなかったので、CRMに関しては私がすべてを担うことが許されていたのです。マーケティングや経営のコンセプトとしても需要な位置づけにあるCRM戦略にそのような形で関われたのは非常に大きなやりがいでした。

―インターンで辛かったこと、悔しかったことは何ですか?

CRMに関しては誰にも聞けない、わからないことは自分で解決しなければならないという現実が、何よりも難しかったです。むしろ、私が誰よりもCRMについて詳しくなって、それをHASUNAの皆に共有しなければならないような立場だったので、責任は重く感じていました。悔しかったことは、自分自身が思っていたよりも、ずっと何もできなかったことです(笑)頭の中ではあれもこれもやりたい、やればきっとHASUNAのためになると思うようなアイディアがたくさんありました。でもいざ具体的な企画に落とし込もうとすると、データが足りなかったりうまく言葉にできなかったり、時には他の業務との両立ができず、結局思うような形に仕上げることができないことが多々ありました。私の能力不足なのか、心のどこかに甘さがあるのか、色々と悩み落ち込むことも少なくありませんでした。

―インターンを通して得たものは何ですか

ソーシャルベンチャーについて知るという当初の目的はある程度達成することができました。HASUNAだけでなく、HASUNAに勤めるうちに他のソーシャルベンチャーの活動についても調べたり考えたりする機会があったため、社会貢献とビジネスの両立というテーマを今後より深く追及するのに有意義な経験をたくさんさせていただきました。

「ソーシャルベンチャーも選択肢の一つかな。」などと半端な気持ちで言うことは金輪際ありません(笑)

―将来ビジョンや問題意識に対してインターンが与えた影響やもたらした変化は何ですか?

会社を経営するということの重みについて知ることができたのは私の考えに変化をもたらしたと思います。会社の代表が多くの人の人生を背負っているのだということを、インターンをしてみて初めて実感しました。HASUNAの場合は、HASUNAの社員のことは言うまでもなく、世界各地の職人とパートナーシップを結んでいます。例えばルワンダからはジュエリーパーツに加工した牛の角を輸入しているのですが、これを研磨しているのは元ストリートチルドレンだった少年たちです。彼らはHASUNAの工房で働くために技術を習得し、路上生活から脱するために懸命に私たちと仕事をしてくれています。仮にもしHASUNAが経営破綻してしまったら彼らの人生はどうなるのだろうと想像すると、ただのインターン生である私でさえこわくなります。「ソーシャルベンチャーも選択肢の一つかな。」などと半端な気持ちで言うことは金輪際ありません(笑)起業したりソーシャルベンチャーに勤めたりすることは、今すぐにはは考えられません。これを一見すると夢が以前にも増してぼんやりしてしまったかのようにもとれますが、実際はこのような気持ちを持つことができるようになり、自分の将来や夢についてより現実的に考えられるようになったので大変有意義な収穫でした。

―これから内定後のインターンを考えている人にメッセージをお願いします。

内定後の一年間は、自分のキャリアプランや将来の夢についてじっくり考えることができる最後のまとまった時間だと私は覚悟していました。社会人になる前に自分の将来の夢をより明確なものにしたいという思いが強くありました。自分が将来どんなことをしていたいのかについてのビジョンがないままに内定先に入社してしまったら、ただ日々の業務に追われるだけの毎日を何年も何年も送ってしまうような気がしていたのです。結果的にそういった部分ではインターンを経験して本当によかったと思っています。社会が目前に迫っているからこそ得られるものはたくさんあるはずなので、みなさまも是非チャレンジしてください!

(取材:2011年3月)