内定後インターンのススメ

体験談

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コーズ・マーケティングを通じて、貧困問題を解決したい。それがインターンを通じて確かになった私の想いです。

プロフィール

  • 大学:立命館大学
  • 所属:株式会社ローソン
  • インターン先:NPO法人かものはしプロジェクト

[NPO法人かものはしプロジェクト概要]
児童買春問題の解決をミッションに掲げ、強制的な商業的性的搾取を防止する活動を、様々なアプローチから展開している。
http://www.kamonohashi-project.net

ソーシャルビジネスに関われるのは今しかない!自分が何にでも挑戦できる期間は後わずかしかない!そう思い、内定後インターンをしようと決めました。

―インターンをする以前で学生時代、特に力を入れた活動や将来ビジョンに つながるきっかけとなった活動や経験を教えてください。

高校生のころに「世界がもし100人の村だったら」というTV番組を見たことがきっかけで、「将来は貧困問題を解決するために働きたい」と思うようになりました。

大学1年生では国際NGOサークルに所属してフィリピンを2回訪れ、住居建設活動のお手伝いをしたり、スラム街に住む家族の家庭訪問やインタビューをさせていただいたりし、小さな活動でも確実に現地の人たちの環境改善につながっていることを実感しました。ただ、もともと抱いていた「貧困問題は貧困層の人たちを経済活動に巻き込んでいくことで解決できるのではないか」という思いが強くなると同時に、自分にできることはもっと他にあるのではないかとも思いました。

そこで、大学3年生ではマーケティングについて学べるゼミに入ったのですが、ちょうどその頃、ボルヴィック(volvic)の1L for 10Lでお馴染みの、「この商品を買うと○○円がNGOに寄付されます」という取り組みが注目され始めた時期でもあり、途上国での経済活動を促進する仕組みだけでなく、先進国での経済活動が現地支援につながる、コーズ・マーケティングという手法にも興味を持ち始めました。

貧困問題に関心はあっても、日頃の生活でできることは少ないと感じていたので、一消費者としてもコーズ・マーケティングはありがたいと思ったのです。ゼミではマーケティングの基礎を学ぶと共に、コーズ・マーケティングが消費者行動に与える影響について研究を行いました。

―どういう問題意識や将来ビジョンを持ち、どのような就職活動をしましたか?また、結果なぜ、今の内定先に決めましたか?

私は「働く=世の中に直接的に影響を与えられること」だと思っていたので、貧困問題を解決するために自分には何ができるか、どう役に立てるかを考えながら就職先を決めたいと思っていました。ただ、実際に具体的なイメージは描けていませんでしたし、貧困問題の原因やアプローチ方法についても、自分が一番心を動かされる部分をもう一度しっかり確かめたいと思い、大学3年生の夏休みは社会問題に関する映画を見たり、ソーシャルビジネスについての本を読んだり、社会起業家に関するイベントやセミナーに参加したりしながら、自分の「こういう風に問題解決に貢献したい!」と思えることを明確にするようにしていました。そうする中で、やはりコーズ・マーケティングへの興味が変わらず自分の中にあることに気づきました。

「世の中には社会問題を解決するために活動している組織はたくさんある。ただ、活動資金が限られているために限られた範囲でしか活動できていない組織も多い。コーズ・マーケティングでより多くの資金が回ることで1つ1つの組織の活動をより促進することができたら、問題解決へのスピードを速められるのではないか。」と考えるようになったのです。

そこからは、コーズ・マーケティングを普及させるためには?volvicのような「この商品を買うと○○円がNGOに寄付されます」という商品が日常的になる状態って?ということを中心に考え始め、私たちにとって身近なお店である”コンビニ”でコーズ・マーケティングの商品が増えるといいのではないかという結論に達しました。コンビニの特性上、全国に一斉に影響を与えられる可能性があるし、小売業という側面から、様々なメーカーを巻き込むこともできるのではないかと思ったからです。

実際は自分のスキルアップという観点からベンチャー企業なども受けましたが、従来の型に囚われず新しいことに挑戦していく風土のある株式会社ローソンに内定をいただくことができ、就職活動を終えることができました。

―内定後の大学4年の過ごし方として、数あるチャレンジの選択肢がある中でなぜインターンをしようと思ったのですか?

インターンをしようと思った理由は2つあります。1つ目は、もともと興味があったソーシャルビジネスに関われるのは今しかない!と思ったからです。就職先も決まり、4月からの次のステップが明確になったことで、やりたいことに近づけるわくわく感と同時に、自分が何にでも挑戦できる期間がわずかしかないという焦りもでてきました。就職先に選んだのは、結局は営利を追求することが重要になってくる民間企業だったので、問題解決を第一のミッションに掲げて働けるソーシャルビジネスや社会起業家の方たちと一緒に働いてみたいという思いがありました。

2つ目は、コーズ・マーケティングの現場を知りたい!という思いがあったからです。コーズ・マーケティングについてはゼミで勉強したり、この手法を普及させたいと思って就職先を決定しましたが、実際NPOやNGOに求められていることなのか、普及させたいという方向性は間違っていないだろうか、と不安になると同時に、論文を読むだけでは分からないことを知りたいと思いました。そのためには、実際にコーズ・マーケティングに取り組んでいる組織で働いてみることが一番いい方法だと思ったので、インターンをしようと決めました。

―インターン先を選んだ決め手、インターン先の事業内容、インターン先でどのような仕事を行ったかを教えてください。

NPO法人かものはしプロジェクトを選んだ理由は、まさにコーズ・マーケティング、キャンペーンの部門でインターン生を募集していたからです。

かものはしプロジェクトのサポーター事業部では、カンボジアの児童買春問題を防止するために支援している孤児院や警察訓練に必要な資金を調達する業務を行っています。私はその中で、企業との連携キャンペーンの担当として、コーズ・マーケティング・キャンペーンの立案から、広報、キャンペーン結果の報告までの一連の流れに関する業務を行っていました。

ゼミで学んだことが現場で使えない。知っていることと使えることは全く別のことなのだとショックを受けました。

―インターンをしていて面白かったことや、やりがいを感じたことを教えて下さい。

面白かったことは、コーズ・キャンペーンに対する企業や消費者の反応をダイレクトに知ることができることでした。キャンペーン中の広報手段の1つとして、Twitterを使ったPRを行っていたのですが、キャンペーンへの参加がスラムの子どもたちの教育支援につながることを知り、積極的に広報の拡散に協力して下さる方や、色々な質問をしてよりキャンペーンを知ろうとしてくださる方、そして「地方に住んでいるので、できることは限られているけれど、コーズキャンペーンなら地方からでも協力できることなので嬉しい」という声を寄せてくださる方など、多くの人がコーズキャンペーンに興味を持ってくださっていることが分かり嬉しかったです。

―インターンで辛かったこと、悔しかったことは何ですか

辛かったことは、一人で考え実行することが求められていることでした。これは、インターンを始めるまで気づかなかったのですが、今まで所属していたサークルや学生団体では、話し合いや議論をしながら物事を決定したり、自分の考えを深めていくことが多かったので、一人で提案内容や方法を考え抜くということが、実は苦手だったということに気づきました。今までいかに周りの人に助けられていたのかを知るいい経験になったと思います。

また、ゼミで学んだ企業の分析手法について、実は手法の概要しか理解しておらず、実際に使えるレベルまでは身についていないことにも気づき、ショックを受けました。知っていることと使えることは全く別のことなのだと実感し、それからはゼミに限らず学校の授業に対する意識が変わりましたし、学習だけではなく、実践が大切だということを意識するようになりました。

―インターンを通して得たものは何ですか?

一言で表すと「社会人になるための心構え」です。上司や提携企業の担当者とのやり取りを通して、仕事をするとはどういうことかを自分なりに掴むことができました。特に、忙しい上司への自分の意見の伝え方や教わり方、複数の関係企業と連絡を取り合ってプロジェクトを進めた経験は、4月から必ず活きてくることなので、先に経験させていただけてよかったなと思っています。

また、社会に出る前に多くの社会人の人と知り合うことができ、一緒に働くことができたことは、自分の中の「仕事観」を養うことにつながりました。OB・OG訪問をするよりも、間近でスタッフの方の仕事に対する姿勢を見ることのほうが、私にとっては学ぶことが多く、こういう風に仕事をできるようになりたい、こういう社会人になりたいという理想の社会人像が描かれつつあります。

内定後にインターンをしたことによって、自分の想いが確かなものになり、入社後4月からの目標が明確になりました。

―将来ビジョンや問題意識に対してインターンが与えた影響やもたらした変化は何ですか?

インターンでコーズ・キャンペーンに関わらせてもらえたことで、実際企業やNPOがキャンペーンにどのような思いを込めているのかや、コーズ・マーケティングを行う上での課題や可能性など、論文を読むだけでは分からなかった部分を自分なりに落とし込むことができました。コーズ・マーケティングを普及させるための糸口も見つけられたような気がします。

今まではただ、「コーズ・マーケティングを広めたい!」との思いが先行していましたが、そうするために何が必要なのか、私には何ができるのかという仕事上のイメージを掴むことができ、4月からの目標を明確にすることができました。実際にコーズ・マーケティングに関わった経験は、自分の中の思いをより確かなものにする自信にもなっています。

―これから内定後のインターンを考えている人にメッセージをお願いします。

「4月から社会人なのにもう働くの!?遊ばなくていいの!?」内定後のインターンの話をすると、そう反応する人も多いと思います。自由に使える時間が多い最後の学生生活、資格を取るのも、長期的な海外旅行に行くのも、遊びまくるのも、卒論に打ち込むのも自由です。ただ、私は内定後だからこそ、インターンで得られることが数多くあると思いました。

1~3年のうちにインターンをすることは、自分のやりたいことや適正を見極め、就職活動で活きる経験になるのだと思うのですが、一方で、内定後のインターンは今後の進路が分かっているだけに、活用の仕方が何通りにもなります。私のように、自分のやりたいことを一足早く経験して、社会人になってからの働き方を模索することもできますし、就職先では逆の立場、あるいは絶対に関わらないだろう職種を経験することで、多角的に物事を捉えることができるようにもなると思います。社会人になることへの不安を解消できる場にもなるかもしれません。そういった意味では、インターンをしながら目標を見つけていくというよりは、ある程度、知りたいことや経験したいことを明確にしておいたほうが、より有意義な経験になるのではないでしょうか。就職活動での自己分析を通して、より自分について知っているからこそ生まれる目標もあると思います。

しかし、就職先が決まっているという心の余裕は、ともすると無責任にもなりかねません。何か困難や壁にぶつかったときに、「どうせあと何ヶ月かで終わるんだ。4月からは別の環境が用意されている」と考えてしまえば、そもそもインターンをする理由はありません。4月からの職場ではできない経験、または直接的に活きる経験ができるからこそ、ぜひ正面から体当たりでぶつかってみてください。必ず今後につながる自信になると思います。

(取材日:2011年3月)