内定後インターンのススメ

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現場を知ることの尊さを知り、私が語ってきた高齢者向け事業というものがどれだけ紙上の出来事であったかを実感しました。そして、この道で頑張っていくんだという覚悟が、日々強まっています。

渋谷 慧佑 さん

  • 大学:青山学院大学
  • 内定先:三光ソフランホールディングス株式会社
  • インターン先:株式会社リリムジカ
  • 仕事内容:神奈川エリア営業担当 兼 人事部長

◆インターンをする以前で学生時代、特に力を入れた活動や将来ビジョンにつながるきっかけとなった経験を教えてください。

高齢者との関わり方が変化したことです。とある晩夏、祖母が認知症を患って、我が家へやってきました。以前から物忘れが激しく、迷子になってしまうこともあり、祖父だけでは世話をし切れなくなってしまったんです。彼女が家に来てから、家族の生活は少し変わりました。いえ、別に力を入れて活動していたわけではありません。私自身、楽しんで祖母と暮らしていますよ。

◆どういう問題意識や将来ビジョンを持ち、どのような就職活動をしましたか?結果、なぜ今の内定先に決めましたか?

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結果から言うと、介護サービス事業を展開している会社に就職することにしました。当初、祖母のことは就職活動にまったく結びつけていませんでした。早い段階で就職活動を始めて、短期インターンも数多く経験しました。その中で、なんとなく高齢者向け事業をやりたい自分に気が付きました。

そして、あるビジネスコンテストに参加したことは大きな転機になりました。チームでは私の希望が通り、高齢者向けの新規事業を立案することになりました。ところがそこから上手くいかない。「収益性を取るか、社会貢献性を取るか」という点で議論はまとまらず、何も進まなくなってしまいました。結局、高齢者を対象にすることを諦め、地方活性化の事業案を発表することになりました。しかも発表者は私でした。本当は高齢者のためになる事業を作りたかったのに、発表者として今提示している案の素晴らしさを説かなくてはいけない。辛くてつらくて、終わった後には悔しくて手洗い場で一人泣きました。この経験が高齢者へ本当に価値あるものを提供したいという気持ちをより強くしました。

大学やサークルでは国際政治を専門に扱ってきました。その影響もあってか「国内で革新的な高齢者向け事業を立ち上げて成功させ、それを輸出する」ことがビジョンです。具体的にどのような事業にすべきか、いまだ定まっていません。サービスかもしれませんし、モノかもしれません。内定先では1年目から経営企画を担当する上、ホールディングスという全体を俯瞰する立ち位置はまだビジョンが曖昧な私にとって魅力的な環境に思えました。何より介護サービス事業を既に輸出し始めている会社です。自分の想いとの方向性の一致は大きな要素でした。

◆内定後の過ごし方として、数あるチャンス選択肢の中からなぜインターンをしようと思ったのですか?

 『血』を得たかったことが一番の理由です。「ロジックが成り立っているのは最低限であり、それ以上に大切なのは『血』が通った事業であるかということだ」「『血』とは生の声から出てくる現場のニーズであり、また何としても人々に価値を提供したいという提供側の熱意である」と安宅和人さんから聴いて以来、私はそれを得る場を探していました。

リリムジカは音楽プログラムを複数の施設で行い、介護現場の活性化を図っています。特定の施設のみならず、数多くの施設へ伺うことができるのは貴重な機会です。就職後には経営企画の立場になるため、現場感覚を今のうちに養っておきたいと考えました。最初に営業を希望したことも、これが関わっています。そして、何よりワクワクした気持ちで331日を終えたいと考えていました。卒業した先輩たちが「学生が終わっちゃう」「社会人になってしまう」とぼやく姿を見てきました。そんなどんよりとした気持ちで、新しい門出を迎えたくありません。しかしその一方で、自分が学生から社会人に急転換できるようにも思えなくて不安でした。だから内定後インターンシップという形で一歩先に準備して、自分の覚悟を固めることにしました。

◆インターン先を選んだ決め手、インターン先の事業内容、インターン先でどのような仕事を行ったかを教えてください。

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創業者である柴田の音楽プログラムを見学して「ああ、これは祖母にも参加して欲しいな」と思ったことが決め手になりました。同期インターン生の渡辺が、後輩を募集する際に「そのサービスは大好きですか」と問いかけていたんです。まさにこれだなあと。多くの人は高齢者の「できないこと」に目が行きがちです。そのため、それを支える事業は社会に数多く存在しています。その一方で、まだまだ残されている「できること」を引き出す事業はあまりありません。リリムジカは後者に属する珍しい音楽の会社なのではないかと思いました。一目惚れだったのかもしれませんね。

リリムジカは一人ひとりが自分らしく生きることができる社会を作ることを理念にしています。事業内容は、高齢者向け施設に音楽プログラムを実施することです。年を重ねると「おじいちゃんおばあちゃん」になってしまいます。「おじいちゃんおばあちゃんだから」ではなく「○○さんだから」とその人らしさを引き出す瞬間を作っています。そんな瞬間を目の当たりにすることで家族や職員の方々は新しい気付きを得てくださいます。

私は神奈川エリアにて営業担当しています。そんな瞬間を作り、広めるためのお手伝いをしています。テレアポや飛び込みでアポを取り、商談を行うことが主な仕事です。広報も担っており、プレスリリースなどの作成も行っています。また新規にミュージックファシリテーターを採用する人事も行いました。こちらはリリムジカを広めていくために、現場で音楽を担当する人を探す仕事です。人材募集のための広報及び応募者対応を任されました。

どちらの仕事も、社長から与えられたわけではありません。「こういうことをやってみたいです」「こんなことをやったら面白そうじゃないですか」と持ち掛けるたびに、「ではやりましょう、渋谷さん主体で」と返ってくるんです。言い出したのが自分ならば、やらないわけにはいきません。周囲の助けを借りながら、とにかくやり抜くことを大切にしていました。私がインターンを始めてから、取引先は2倍に拡大し、売上は1.47倍へ増大しました。目に見える形で貢献できたことは嬉しいですね。

◆インターンをしていて、面白かったことや、やりがいを感じたことを教えてください。

やはり自分がやったことで成果が出ることは嬉しくて、やりがいを感じる瞬間です。初アポ、初契約、初導入、初取材、初応募、初説明会……全部が思い出になっています。特に初めてテレアポで会う約束をした瞬間は信じられませんでしたね。もう嬉しくて、声を張り上げて「ありがとうございます!」と言ったら、何事かと驚かれましたよ()

インターンを通して「できる人」と会うことは大きな楽しみでした。目標にしたい人に出会えることは、自分にとって大きな刺激になります。それは必ずしも本にも載るような業界の有名人ではなく、現場や講演会に足を運ぶと偶然出会える方々とのご縁です。また社内でも、同じ神奈川エリアを担当するファシリテーターである梅崎と湯山からは多くを学びました。こうして仕事をしているからこそ出会える方々の熱意や姿勢には大変勉強させていだたきました。

卒業も間際に控えた頃、多くの方からご協力をいただいて祖母の通うデイサービスにて体験プログラムを行うことが出来ました。『この道』を共に歌った時、なんだかじんわりとしてしまって。最後の『ふるさと』では声が出なくなるほど涙がこぼれました。この瞬間が見たいとリリムジカで働き始めた時を思い出しました。あの時の気持ちは、どんな言葉で表そうとしても陳腐です。

◆インターンで辛かったこと、悔しかったことを教えてください。

インターンを始めて間もない頃に連続で失注したことは悔しい思い出です。どちらも自分で獲得した案件でした。施設をご利用なさっている方々にリリムジカの音楽を伝えたい。職員の方々にも音楽を通して貢献していきたい。ミュージックファシリテーターの方々の仕事場を作ってお給料を増やしたい。リリムジカの売り上げを伸ばしたい。なにより自分も格好良く決めたい。様々な欲が湧いた帰結でしょうか。しかし、大切な教訓にもなりました。あの時の自分は、心から相手に寄り添う気持ちが欠けてしまっていたと思っています。相手のことをしっかり知る手段としての傾聴は、本当に大切です。

そしてインターンも終盤に差し掛かった時期になって、社長がいる前で商談を上手く進められなかった瞬間は恥ずかしく、また辛い記憶です。当初の想定とは異なる展開になり、先方の考えも読めず、どう対応すればいいのか分からなくなってしまいました。社長が横からフォローして下さらなかったら、どうなっていたことか。経験を重ねて自信をつけつつあった私に、落ち着いて「私はこうしたいんですが、如何ですか」とどうして言えなかったのかと反省する機会が生まれたことは厚みある経験でした。

◆インターンを通して得たものは何ですか?

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社長からの受け売りですが「ファジーさ」が身についたと思っています。白黒をつけるよりも柔軟に考えて行動する大切さは、リリムジカという組織が私に教えてくれました。

「歯を食いしばって頑張る」ことも身に染みています。私が担った仕事のほとんどは、リリムジカにとっても初めての仕事でした。会社としてノウハウがないために、これをやれば上手くいくという保証はありません。社会人の先輩やリリムジカ社内の方々からいただいたアドバイスを基にやることを決めて、何かしらの成果が出るまで必死にやるように心掛けました。もしやり方が間違っていたのなら社長は指摘してくれます。泥臭いですが、自分のやり方を信じて我慢することも大切なんだなと感じています。

また経営の現場を知ることができました。一つ目は介護事業所の経営です。成長産業である高齢者向け事業は、ある程度金銭に余裕があると考えていました。営業として複数の介護事業所を回って、必ずしもそうでないことを知りました。二つ目はリリムジカの経営です。社長は、私をSVP東京(*)との定例会合に出席させてくれます。損益計算書も見せてくれます。ちょっとした悩みも話してくれます。事業を運営し、会社を経営することはこういうことなのかと、身を以って感じています。お金がどれだけ大切か、日常生活とはまた違った側面から考えることが出来ました。

(*) 社会的な課題の解決に取り組む革新的な事業に対して、資金の提供とパートナーによる経営支援を行っている団体 http://www.svptokyo.org/

◆将来ビジョンや問題意識に対してインターンが与えた影響やもたらした変化は何ですか?

インターンによって自分の決意が、より確かなものになりました。実はたまに悩んだりするんですよ。高齢者向け事業という道を選んで本当に良かったのかなって。しかし人生に正解はないからこそ、選んだ先を正解だと信じなければいけない。リリムジカで働いて、過去の私が語ってきた高齢者向け事業というものがどれだけ紙上の出来事であったかを感じています。現場に飛び込むことほど尊いことはないのかもしれません。そして、この道で頑張っていくんだという覚悟が日々強まっています。

たまたまインターン中に、家でもちょっとした出来事がありました。家族が私に、祖父母のことについて不安を漏らしたのです。インターンを通じて現場経験を重ねた私からすればそれらは杞憂でしかありませんでしたが、皆は大真面目。もしかしたら、要介護者を抱えている他の家庭も同じように過度に悩み、あらぬ不安に苛まれているのかもしれません。本人だけでなく、その家族のためにも、私は行動していかねばと、ふと悟った瞬間でした。

もしこれらを『血』と呼ぶのなら、当初の目標は達成されたのかもしれませんね。

◆ETICを通じてインターンをしている他のインターン先の同期の仲間や、挑戦を支えてくれたOBOGのメンターはどういう存在ですか?

私はETIC.では17期前期生という枠組みに該当します。約40人の同期だけでなく、他期の学生とも交流する機会がありました。目の前にいる彼や彼女はどうしてインターンをしているのかという多様な背景に触れることができたことは興味深い経験でした。

私のOBOGメンターはケアプロ株式会社でご勤務なさっている落合さんが担当でした。実は彼、私が所属しているインカレサークルの先輩だったんです。そんなご縁もあって、彼には大変お世話になりました。営業に関する突っ込んだ悩みに関しても真摯に向き合ってくださいました。営業の確度の上げ方について悩んでいた時にいただいたアドバイスを基に、新たな営業手法を社内で検討し、また営業資料の改善も行いました。そして試用した地域におけるすべての商談が体験プログラムへ転換されました。

◆EIPのカリキュラム(研修合宿・メンタリング・講座)はあなたの成長にどんな影響を与えましたか?

先ほど述べた17期前期生の仲間たちが一堂に会する機会が、3か月毎にある研修合宿です。また同期は5~6人のチームに割り振られ、毎月メンタリングと称して対面で定期報告を行います。これらの機会は、私にとって自分の立ち位置を相対化する機能を持っていました。同期の中で自分はどれだけ楽しく頑張って働いているか、自分が学ぶべき分野に関して先をいく同期は誰かなどなど……比較することで初めて気付くこともあります。そうして見つけた「要素」をより伸ばしたり、補おうとしたりと意識することができました。

講座に関して、特に羽佐田さんの広報・PR講座に積極的に参加しました。営業とPRや広報は不可分です。インターン先でもすぐに実践できることから体系的な戦略まで、基礎をしっかりと学びました。実例を織り交ぜながら進めるため、PRや広報の理論を腹に落とし込めた印象があります。そうして、営業一辺倒だった私の仕事は変わりました。彼女の講座を通して、初めて作成したプレスリリースは業界誌4社から問い合わせをいただきました。また営業資料作成にも得た知識を活用したところ、資料送付後にいただく反響確率が格段に向上しました。課題図書としてご提示いただいた佐藤義典著『ドリルを売るには穴を売れ』は、後輩に勧めたい入門書です。

◆これから内定後のインターンを考えている人にメッセージをお願いします。

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インターンは、あくまで内定後の一つの過ごし方に過ぎません。将来どんな自分になりたいか、そして逆算すると就職までに何をすれば良いか、そして今の自分は何をしたいのか、じっくり考えてみてください。考えが7割固まったら行動してみて、しっくりくるかどうか感じてください。

そしてインターンをやろうかと考えている人には一つだけ言えることがあります。それは成果が簡単に出ると思わないことです。体験談を読むと、なんだか自分もやれるんじゃないかって思ってしまいますよね。それはそれで一つの形なんだと割り切って、自分なりに頑張ってください。微力ながら応援しています。